「フタル酸ジイソニル(DINP)」の輸入時のHSコード(税番)、税額は?

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フタル酸ジイソニル

HSコード(税番)

統計品目番号及び他法令

顧客からお問い合わせのあった商品です。この商品は有機化学品ですので、第6部化学工業(類似の工業を含む。)生産品というジャンルに所属することはわかります。輸入を前提にしているとの内容でしたので、税番を詳しく調査してみます。一般的に可塑剤(かそざい)という名称で知られている物質です。
可塑剤(かそざい)はプラスチック製品などに柔らかさを与えるために使用するということですが、あまり聞いたことのない名前ですね。実際に税番を調べてみることにしましょう。
目次

ではさっそく税関WEB実行関税率表(タリフ)を使って「フタル酸ジイソニル」の号までの、6桁数字を特定していきましょう。

税関の最新版WEB実行関税率表(2024.02)


https://www.customs.go.jp/tariff/2022_01_01/index.htm


税関の品目分類検索


https://www.customs.go.jp/searchtc/jtcsv001.jsp
初めて調査する商品ですので、基本に戻ってまず何類に分類されているか目星をつけていきます。その為には検索キーワードの名前が必要です。化学製品の多くはいくつかの別名をもっています。


今回の「フタル酸ジイソニル」には一般名称の他、別名も多く、全く違う物質のように感じます。



1,2-ベンゼンジカルボン酸ジイソニル
DINP
フタル酸ジノニル
フタル酸ジイソデシル
英名	1,2. BENZENED CARBOXYLIC ACID DIISONONYL ESTER
(すべて同じ物質です。)


では英名は別にして、共通するフタル酸で品目分類検索を行ってみましょう。



まず英名を検索する前に各名称に共通する「フタル酸」を品目分類検索にかけてみます。
検索キーワードは共通する名前「フタル酸」です。



検索のラジオボタン輸入を選択して


https://www.customs.go.jp/searchtc/Result#jit001btnarea



の結果がでました。

検査結果から気づくこと

たくさん検索にかかりました。



たくさん検索にかかるということは、用途が多く色々な物質に使われている溶剤だということですね。



実行関税率表の赤字枠に注目してみます。ここには29類の税番しか記載されていません。ということは間違いなく29類のジャンルに分類されるということです。


その中でもいくつかの項があるようです。


2917までが共通、号が32,33,34,35,36,37,39号と7種類に分けられています。

関税率表解説、分類例規も輸入貨物の品目分類事例も29類のヒット件数が一番多いのがわかります。

この3種類の項、17項、25項、33項に絞られるようです。中でも第29.17項の文書ヒット数が一番多いですね。

検索結果から税番の特定

他の物質の一部として使用される場合を除き単一で分類される場合は、29類で間違いないようです。では項の番号「2917」を実行関税率表でみていきましょう。


WEB実行関税率表の29類を探してみます。検索結果右横の「輸入統計品目表(29類)」をクリックし「2917項」を探してみることにします。

「2917項」の記載内容

「ポリカルボン酸並びにその酸無水物、酸ハロゲン化物、酸過酸化物及び過酸並びにこれらのハロゲン化誘導体、スルホン化誘導体、ニトロ化誘導体及びニトロソ化誘導体」(この記載内容の意味は商品を分類してゆく過程で少しずつ理解できるようになります。)
と書かれています。つまり、この項は記載内容の通りに分類されているということですね。内容をみていくと、どうやら酸、酸化物、~化誘導体という名称が分類するためのキーワードになりそうです。



通関士としてやることは、税番と税率を確定させること。品名と別名をたよりに実行関税率表の2917項を更に細かく調べてみます。


https://www.customs.go.jp/tariff/2022_01_01/data/j_29.htm



まず、最初に商品の名前がのっているか調べていきます。

あ!ずっと後半の方にこの名前の記載がありましたね。別名、英名の記載が同じであれば、その物質と特定できます。
たしかにフタル酸という名前がでてきていますが、「無水フタル酸」「オルトフタル酸」「テレフタル酸」などの記載があります。はたしてどの項に目的のフタル酸ジイソニルが分類されるのでしょうか?

無水フタル酸とテレフタル酸は明らかに違う物質です。

オルトフタル酸のオルトの意味もわかりません。

ここで、くじけてはいけません。「関税率表解説・分類例規」のタグでリンクされた29r.pdfをみてみましょう。その中から「2917」項「フタル酸」の名称に関連する部分を抜粋してみます。

53ページの記載です。赤枠の部分に2917項とフタル酸の名前の記載がありました。
さらに詳細をみてみます。54ページの記載です。
オルトー」ありましたね。ベンゼンジカルボン酸(C6H1(COOH)2)に「オルトー」を含む3種類があり「オルトベンゼンジカルボン酸は一般にフタル酸(オルトーフタル酸)と呼ばれる。」

つまりオルトーフタル酸はフタル酸と同じものとして分類していい、ということですね。

もう一息!

2917.32」と「2917.33」のどちらか決定しないといけません。

「オルトフタル酸~」の共通部分以下の名称が一致するものが、この物質の税番です!
ここで、決め手となるのは英名です。カタカナは英語を日本語表記にしたもの

以下の英名がこの物質の英語表記です。青字の後半部分

「DIISONONYL ESTER」これですね。

英名     1,2. BENZENED CARBOXYLIC ACID DIISONONYL ESTER

以下の赤枠、赤のアンダーラインの部分に注目

オルトフタル酸ジノニル(ジーノーマルーノニル、ジイソノニル等)

つまり 

オルトフタル酸ジノニル=フタル酸ジイソノニル=DIISONONYL ESTER

ということです。

で、このエステルはジオクチル「2917.32」ではありません。

オルトフタル酸ジノニル=フタル酸ジイソノニル=DIISONONYL ESTER

一致しました!目的の物質「フタル酸ジイソノニル」は「オルトフタル酸ジノニル」と同じもの

では税番は

「2917.33.000」

で間違いありません。


検証

最後に検証、一番簡単な検証の方法はその商品の輸入許可通知書をみせてもらう事です。
同じ番号ならば、間違いありません。簡単に輸入許可通知書はみせてもらえませんが、税関に相談すれば教えてもらえます。

申告履歴がありました。品目番号(税番)は同じでしょ。
マレーシアとのEPA協定税率を適用してありますので、関税は無税です。
(荷主用の輸入許可通知書は守秘義務がありますので、税番記載部分だけ切り取っています。商品名はDINPと通称名の記載がありますが、フタル酸ジイソニルです。)

税番は発見できればそれでオッケー、宝さがしや謎解きゲーム感覚で調査しましょう。関税定率法上の番号ですから税関にしか通用しませんが、深堀していけば、化学分野での知識も広がります。

さて次に税率はというと、関税率が横に見つけられない場合、どこの類または号にこの番号が所属しているのかを知る必要があります。WEB関税率表には各関税率とEPA協定税率の記載がありますね。ではそれを特定してみましょう。

「2917.33.000」が記載してある箇所には、関税率とあり基本、暫定、協定、特恵、特別特恵と記載のある項目に数字がかかれていますね。これが関税の適用税率です。横の商品名とそれぞれの項目が交差する部分に記載されている数字が関税率です。(%表記ということは従価税率ですね)

基本税率4.6%      WTO協定税率3.1%





関税率表の基本4.6%>WTO協定3.1%ですので小さい方WTO税率を適用

(基本税率>WTO協定税率ですので、低い方のWTO税率が関税適用税率です。)

更に右横に国名と無税とかかれている部分は二国間の経済連携協定、EPA協定税率の適用税率です。こちらも原産地国の証明ができれば、その税率を適用することができます。
EPA税率を適用できた場合、関税は無税になります。

ということで、今回税率の適用優先順位は

EPA協定税率=無税>WTO協定税率=3.1%>基本税率=4.6%
という順序になります。今回は原産地証明なしの為WTO協定税率を適用し税額を求めていきます。

税額を計算してみましょう

関税額と消費税額の計算方法

関税率が%で表示してある場合は課税標準にこの関税率をかけることによって関税額をもとめます。輸入はCIF価格の千円未満を切り捨てした価格が関税課税標準



例えば仮に¥換算で


CIF価格 ¥12,345,678だったとして関税課税標準は¥12,345,000(千円未満は切り捨て)になり協定税率3.1%の場合、¥12,345,000 X 0.031 = ¥382,695  (100円未満切り捨て-> 
¥382,600
この金額が関税額となります。


さらに消費税額を求めてみましょう。



現在消費税は10%ですが、国と地方に分けて計算します。
で、消費税の課税標準はというと


CIF価格¥12,345,678 +関税額¥382,600 = ¥12,728,278
関税額にも消費税ってかかります。二重課税ですね。


消費税課税標準¥12,728,000 
(国の)消費税	¥12,728,000 X 7.8% =¥992,784 (100円未満切り捨て->¥992,700



地方消費税課税標準¥992,700
地方消費税->¥992,700 X 22/78 = ¥279,992(100円未満切り捨て->¥279,900
合計消費税額	¥992,700 +¥279,900 = ¥1,272,600
関税と消費税額の計算簡易シート挿入予定(任意の数字で計算できるようにしたい)



ということになります。これらの金額は輸入申告時に一括して支払います。
輸入納税申告は申告と同時に納税するという基本パターンです。
納税が完了しなければ、輸入許可はおりません。


個人ではこのような金額を負担してまで、フタル酸ジイソニルを輸入したいとは思いませんよね。


今回は初めての用語がたくさん出てきました。プラスチック製品に柔らかさを加える可塑剤(かそざい)から始まり、フタル酸のオルト、ジノニルやジイソノニルの名称の根拠、たくさんの別名と多岐にわたる使用用途、たいへん勉強になりました。でも可塑剤(かそざい)を使用しても石頭は柔らかくはなりません。

まとめ

税関のHP検索機能を使って税番をみつけ税額を計算

大まかな類に目星をつける

無機化学品28類		有機化学品29類		化学調整品38類

税関のWEB実行関税率表と品目分類検索を使って名前、別名、英名で品目検索をかける

税関の最新版WEB実行関税率表(2022.01)

https://www.customs.go.jp/tariff/2022_01_01/index.htm

税関の品目分類検索

https://www.customs.go.jp/searchtc/jtcsv001.jsp

品目分類検索から得た詳しい情報を活用する

部注、類注、関税率表解説、分類例規など

項をある程度特定できたら、その項の中に該当する名前や別名があるか探し税番をみつける

別名で当り、検証、更にカタカナを英名で確認する

関税実行率表の記載名称と一致しなければ、根拠を調査する

別名、英名、根拠、類注

適用関税率をもとめ関税消費税額を計算する

関税3.1%	EPA税率が適用できれば無税

統計品目番号(税番)





フタル酸ジイソニル                 統計品目番号(税番)             2917.33.000

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